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創刊1924年(大正13年)、通巻1000号を超えた鶏の専門誌!
ハエの優勢種に即した防除対策を
国立感染症研究所昆虫医科学部
冨田隆史・小林睦生


これまでのまとめ
10・11月号と2号にわたって、京都府丹波町における高病原性鳥インフルエンザの流行に、オオクロバエが関与した可能性を述べてきた。ここでもう一度、オオクロバエの生物学的特徴と照らし合わせてみることにする。
1)オオクロバエは冬季に活動するハエであり、わが国における高病原性鳥インフルエンザの流行する時期と一致した。
2)成虫は動物の糞便や死体などの汚物を食べるため、鳥インフルエンザで死亡したニワトリの死体や排泄物に集まったと思われる。
3)オオクロバエはハエ類の中では大型である(オオクロバエの体長:11-15mm、ケブカクロバエ8-13mm、オオイエバエ:7-9.5mm)。その食餌がウイルスに汚染されていれば、汚染された排泄物等と同時にウイルスも大量に取り込む可能性は高い。本調査で、オオクロバエのウイルス保持個体はケブカクロバエよりも多かったが、これは体のサイズ、つまり、消化器官の容量の大きさによってもたらされたとも考えられる。食餌をより多く摂食できる個体は、排泄物や汚物に含まれるウイルスをも多く取り込むことができるからである。
4)寿命が長く繁殖能力に優れる。オオクロバエの成虫の活動する期間は長く、その期間中何度でも摂食することができる。
5)移動能力に優れ、24時間内で少なくとも2~3kmに存在する近隣の鶏舎間を移動することは容易である(Tsuda, 未発表)。本調査でハエ類の調査を行った京都府丹波町の養鶏場は、国内4例目となる近隣の発生養鶏場とわずかに4kmしか離れておらず、実際に両鶏舎間のほぼ中間地点である2kmの地点でウイルス遺伝子陽性のオオクロバエが採集された。
6)最後に、ニワトリは近くを飛び回るハエを容易に捕まえて、生きたままでも食べる習性があることを追記したい(図1)。そのハエが、もし感染力のあるウイルスを保有していたら、ニワトリがウイルスに感染する可能性は高い。(※図1の写真は12月号に掲載)

以上のことから、少なくとも鳥インフルエンザ流行時には、近隣の鶏舎間においてクロバエ類がウイルスを伝播する可能性は高いと考えられる。従って、鳥インフルエンザが発生した場合は、発生源から周辺へのハエ類の分散を防ぐために、殺虫剤による防除対策が必要となるであろう。次に、ハエ防除対策の現状を紹介するとともに、殺虫剤抵抗性発達の機構を解説する。

(続きは12月号に掲載)