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創刊1924年(大正13年)、通巻1000号を超えた鶏の専門誌!
ハエ類で最も注目すべきはオオクロバエによるウイルス伝播
国立感染症研究所昆虫医科学部
澤邉京子・小林睦生


 ハエ類による病原体の機械的伝播といえば、主に口器の周り(唇弁)や脚の先(褥盤)など、ハエの体の表面に様々な病原体を付着させて飛び回る様子を想像しがちだが、本調査で対象としたクロバエ類は、動物の死体や排泄物を食餌とする習性のハエである。従って、クロバエ類による伝播を考える上で、一旦ウイルスを体内に取り込み、その後に次の動物に伝播する可能性を検討すべきではないかと考えた。そこで、鳥インフルエンザ流行時に、発生農場周辺で採集したハエ類から、個体別に消化器官(そ嚢と腸管)(図1)を摘出し、それらからのインフルエンザウイルスの検出と分離を行った。

 摘出した消化器官からRNAを抽出し、RT-PCR法に加えてより感度の高いsemi nested-PCR法により、インフルエンザウイルスの型(A型, B型, C型)と亜型(H1~H15亜型)を特定するためのマトリックスタンパク質(M)とヘマグルチニン(HA)の両遺伝子の検出を試みた。京都府丹波町で最初に鳥インフルエンザの流行が起きた農場から、約600m東の南側斜面に位置する場所(地点A,図2)で採集されたオオクロバエとケブカクロバエの各2プール(20頭から個体別に摘出した消化器官をまとめて1プールとした)のすべてからMおよびHA遺伝子断片が検出された(図3)。しかし、同地点で採集されたオオイエバエとモモグロオオイエバエからは、いずれの遺伝子も検出されなかった。得られたすべてのPCR産物に対して遺伝子解析を行い、HA遺伝子のアミノ酸配列に、病原性の強さに関わるとされる開裂部位を認めたことから、本ウイルスが強毒タイプであることを確認した。次いで、上述した発生農場からの距離が異なる3地点(A, C, F, 図2)で採集された各10頭から、個体別にウイルス遺伝子の検出を試みたところ、発生農場から600~700 m付近で採集されたオオクロバエの20%(地点A)と30%(地点F)、ケブカクロバエの20%(地点A)から、それぞれMおよびHA遺伝子断片が検出された(表1)。また、農場から東方に約2 km離れた地点Bで採集されたオオクロバエの10%も本ウイルスの遺伝子を保有していたことが明らかになった。
(続きは11月号に掲載)