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創刊1924年(大正13年)、通巻1000号を超えた鶏の専門誌!
オオクロバエ、H5N1亜型ウイルスを
保持した状態で2~3キロ移動


国立感染研究所昆虫医科学部
澤邊京子・小林睦生


 わが国で79年ぶりとなった高病原性鳥インフルエンザの流行は、2003年12月山口県阿東町の養鶏場に始まり、翌04年3月までに大分県九重町では少数のチャボが、京都府丹波町ではニワトリが大量に死亡し、畜産業界ならびに消費社会に大きな波紋を呼んだ。いずれもH5N1亜型ウイルスの感染による流行であった(Mase et al., 2005)。次いで、05年と06年夏季に、茨城・埼玉両県下の養鶏場で弱毒タイプのH5N2亜型ウイルスが流行し、07年1月には、宮崎県と岡山県においてH5N1亜型ウイルスによる高病原性鳥インフルエンザが再燃したことは記憶に新しい。
 一方、アジア諸国においてH5N1亜型ウイルスは水禽および家禽類の間でしばしば流行し、家禽類の経済的損失は甚大である。ほとんどの鳥インフルエンザウイルスは人には感染しないが、例外的に一部の亜型のウイルスは人に直接感染し、致命的な症状を引き起こすことが1997年香港での感染症例(H5N1亜型で六人死亡)以降広く知られるようになった。07年8月31日現在、WHOに公式に報告された感染者数は327名、死亡者数は199名である。H5N1亜型ウイルスは鳥のみが感染するのではなく、鳥から人への感染も危惧される深刻な動物由来感染症である。
 これまでの日本国内の流行において、発生農場へのウイルスの侵入ルートは解明されていない。
 しかし、主に①ウイルスに感染している鶏を海外より導入した。②ウイルスに汚染された器材・車両・卵ケースなどを使用した。③人の衣服・手・長靴などを介してウイルスが持ち込まれた。④野鳥が出入りできる鶏舎や屋外養鶏場では、感染した野鳥がウイルスを持ち込んだ可能性があると示唆された。わが国へのウイルスの持ち込みは感染した野鳥による可能性が高いとされるが、海外より飛来する動物は渡り鳥だけではなく、ある種類の農業害虫(朝比奈・鶴岡、1956)やクロバエ類(倉橋ら、1999)が、梅雨や秋雨前線、台風、季節風などによって運ばれてくるという報告もある。
(続きは10月号に掲載)