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創刊1924年(大正13年)、通巻1000号を超えた鶏の専門誌!
説明責任を果たすことで見える消費者の理解

 安全・安心につながる品質を追求する上でかさむコスト。これを消費者の納得のいく形でいかに価格に転嫁するかは、大きな課題である。
 こうした、課題について一つの考え方を示す研究分野として、「消費者の価格判断のメカニズム」について研究している専門家がいる。横浜国立大学の白井美由里准教授だ。白井准教授の専門はマーケティングで消費者の購買意思決定までの心理を研究している。
 本稿では、7月20日に行われた第二回飼料価格高騰等の畜産をめぐる状況変化への理解醸成のための中央推進協議会」で行われた同准教授の講演の概要を紹介し、食の安全・安心のためのコストを消費者に受け入れられるためのシナリオを同氏の調査研究をとおして検討してみる。

消費者の「価格判断」とはなにか
 消費者はものを買う際にどの程度価格を気にし、どのような基準で高いか低いかを判断しているのだろうか。
「判断価格をみたときに高いかやすいか、妥当であるか」といった消費者自身の主観的な比較。価格、品質、味にもいえるが、実際には不正確であることが多くある。そして、実際には不正確な判断でも、消費者は自分の判断が正確であると仮定して、購買意思決定をすることが分かってきている。
 たとえば自社商品の価格が客観的にみて、市場の中でも低い水準にあったとしても消費者がそのまま受け取っているかどうかはわからない。客観的な数字ではなく消費者がどう感じているかどうかを見ることで、より正確な消費者の反応がつかめるのである。
(続きは10月号に掲載)
フードチェーン全体でリスク低減する取り組みを
日本イーライリリー株式会社「フードチェーン・ブラインドセミナー」講演の要約講演する品川教授
生産現場、動物の医療、予防、そして、加工処理するところまでを一体にしてお互いに一緒に食品衛生というものをやっていかないと食の安全は守れない。この考え方が、今回説明する「Farm to Table」だ。
 川上から川下まで、トータルでいかに食中毒のリスクを減らすか、これが今最も議論しなくてはいけない点であることを強調して話をすすめる。
 また、この話は決してここだけのものではなく、国家機関、たとえば厚生労働省や農林水産省においても導入しようとしているビジョンである。
 厚生労働省はこれまで、O―157やカンピロバクターなどの食中毒をどう減らすか、という対策を常に考えてきたが、もはや、最も「川下」である消費段階だけでは対応できないと考え始めている。
対策の範囲は、消費の現場からスタートして生産現場に近い「川上」へと上がってきているのである。
 こうした考え方は、行政の縦割り構造にも変化を及ぼしている。最近、農水省と厚生省が食中毒に関するシンポジウムを初めて合同で行った。農水省の消費政策課が食中毒を業務の対象にしていかなければならないという認識になったからだ。
いままでは農水省が食中毒について何かするとは考えられなかったが、それが変わってきているのである。
人によって異なるリスク
 現在、食中毒の問題において大きな問題となっているのは、ノロウィルス、カンピロバクターであり、O―157、サルモネラである。
ここで問題になるのが、どれくらいの菌を食べたら食中毒になるのか、ならないのかだ。この業界に関わっている方は分かるだろうが、リスクがゼロということはありえない。とくに、生のものを食べる場合にはなおさらである。生の鶏肉を鶏刺しで食べたらカンピロバクターに、牛の生レバーを食べたらO―157に感染するリスクは常に背負っている。
リスクをゼロにはできない以上、ゼロ鶏肉、牛肉の中にO―157やカンピロバクターの菌がいてもいいのかもしれないが、食中毒になった時には社会はこれを受け入れてはくれない。(続きは9月号に掲載)
社会のモノサシでの判断が危機への適切な対処につながる

事態の終息には「ワン・ボイス」が有効


ミートホープ社の事件以来、食品の安全・安心に対する注目が世間的に高まっている中、道義的責任・管理責任はかつてないほど、高まっている。日頃の法令順守は当然のことだが、想定外の危機が発生した場合、すばやい信頼・安全性回復には、日頃の準備が欠かせない。前回のこのシリーズでは、危機発生から情報発信までの流れを紹介してきたが、本号では、それに引き続き情報内容を確定し、対外的なコミュニケーションをとるまでの間の具体的な留意点と、マスコミ関係を中心とした対応方法について紹介する。

1.情報の収集
危機対策本部の設置
 情報を発信する前段階で重要となるのが、「情報を集約化する」という作業である。この作業では組織的対応ができるかどうかがポイントになる。
 危機対策本部の設置は組織的対応をするためのひとつの手段だ。情報の集約化は多くの人間の力を借りなくてはまずできない。対策本部の召集メンバーを確定し、現場からの情報が集約化される仕組みを整え、指揮系統を明確化しておくことがこの組織を設置する意味になる。
 指揮官は集まってきた情報を把握し、次にどのようなアクションを起すかということを事前に決める。
(続きは8月号に掲載)
事実・情報を把握し、情報をコントロールすることが
素早い体制立て直しに

危機発生時の情報処理対策確立は重要安心・安全につながる信頼を求めて(6)

岡山、宮崎で発生した鳥インフルエンザの問題は、「宮崎モデル」などと言われるように上手くいったと伝えられている。 もっとも、宮崎や岡山の事例では、こうした部分だけでなく、商圏の喪失や、移動制限による出荷停止などによって経済的損失を被った部分があり、一概に良かったとは言えず、むしろ実際に被害に合った経営者の苦悩は今も続いている。
 だがその一方で、「『宮崎の鶏や卵はもう大丈夫』という事実を、信頼感をもってどう正確に伝えていくか」という対外的なイメージ戦略はやはり上手くいったといって良いだろう。一連の東国原知事のニュース報道等では、㈱電通の試算によるとその経済効果は165億円とも言われており、宮崎産に鶏卵・鶏肉に関する悪いイメージの払拭には大いに役立った。
消費者をはじめとする関係者へ、安心や安全に繋がる信頼を再構築するための手段としては効果的だったこの手法は、広報の業界では「パブリシティ」と呼ばれている。新聞の紙上やテレビなどのメディアを使って、対外的なコミュニケーションを適切に実現していく手法である。
「食の安全・安心につながる信頼を求めて」の六回目となる本稿では、この危機発生から素早く立ち直るため、消費者や取引先、そしてメディアを含めたさまざまな相手との対外的なコミュニケーションの方法について、電通PRの田陽典シニアコンサルタントの話を踏まえながら紹介する。(続きは7月号に掲載)